第1条 この規程は、
消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第7章に基づく火災の原因等の調査に関し必要な事項を定めるものとする。
第2条 調査は、全ての火災を調査し、火災予防の施策ないし措置の成果を検討し、その是正改善を図り、もって火災予防の徹底に資することを目的とする。
第3条 調査は規程に定める事項に限り行うものであって、犯罪の捜査に関与してはならない。
2 この規程の運用に当たっては、関係法令の規定に抵触しないよう注意しなければならない。
第4条 調査の主体は消防長又は所轄消防署長とする。
2 消防長は消防署長に対して、調査の遂行上必要な指示を与えるものとする。
第5条 消防長及び消防署長は、調査を実施するため、それぞれ所属職員の中から調査員を指名しておかなければならない。
2 消防長の指名した調査員(以下「本部調査員」という。)は地域内全域の調査に、消防署長の指名した調査員(以下「署調査員」という。)はその管轄地域内の調査に当たるものとする。
第6条 消防署長は、管轄地域内の火災を覚知したときは直ちに調査に当たらなければならない。
2 消防署長は、出火原因の決定上不審があるとき又は特殊異例の火災については速やかに消防長に報告し、必要により本部調査員の協力を要請することができる。
第7条 消防長は、前条第2項の規定による要請があった場合は、本部調査員を派遣して調査に協力させることができる。
第8条 調査員は、常に調査上必要な知識の修得を図るとともに、調査技術の研究に努め、調査能力の向上を期さなければならない。
第9条 調査員は、相互に連絡協調して、調査全般の進展を期するとともに、原因の探究に当たっては不屈の精神をもって冷静周密に調査を行わなければならない。
第10条 調査員は、警察官と緊密な連絡を保持して、調査に当たらなければならない。
第11条 調査員は適正公平を旨とし、強制的手段を避け、穏健妥当な方法により関係者及び一般住民の協力を得るよう留意しなければならない。
第12条 調査員は関係者の名誉を重んじ、調査によって知り得た秘密をみだりに他に漏らしてはならない。
第13条 調査員は、その職務を利用して個人の民事的紛争に関与してはならない。
第14条 調査員は、私服により調査する必要があると認めるときは、消防長又は消防署長の承認を得て行わなければならない。
第15条 調査員は、調査の経過その他参考となるべき事項を記録し保存しておかなければならない。
第16条 火災の種別は、次の各号に掲げる区分とする。
(1) 建物火災 建物又はその収容物が焼損した火災をいう。
(2) 林野火災 森林、原野又は牧野が焼損した火災をいう。
(3) 車両火災 自動車車両、鉄道車両及び被けん引車又はこれらの積載物が焼損した火災をいう。
(4) 船舶火災 船舶又はその積載物が焼損した火災をいう。
(5) 航空機火災 航空機又はその積載物が焼損した火災をいう。
(6) その他火災 前各号以外のものが焼損した火災をいう。
第17条 調査の種別を原因調査及び損害調査に分ける。
第18条 調査員は、その職務を行うに当たり、火災又は爆発の現場及びその他関係ある場所に立ち入ってその状況を検査しなければならない。
2 前項の立入検査に際しては、
法第4条第1項ただし書及び第2項から第4項までの規定を守らなければならない。
第19条 前条第1項の立入検査は、必要に応じ、火元責任者である所有者、管理者、占有者又はその代理者若しくはその他関係のある者の立会いを求めて実施し、調査の信ぴょう力の確保に努めなければならない。
第20条 消防署長は、放火又は失火及び爆発の犯罪があると認めたときは、消防長に報告するとともに速やかに火災原因認定通知書(
第1号様式)によりこれを所轄警察署長に通報しなければならない。ただし、書面によることを要しないと認めた時は、この限りでない。
第21条 消防長又は消防署長は、調査について必要があると認めるときは、火災調査事項照会書(
第2号様式)により関係のある官公署に対し、必要な事項の通報を求めなければならない。
第22条 火災に出場した消防吏員は、警防行動等を通じて覚知から鎮火までの火災の状況の見分に努めなければならない。なお、受持ち区域の消防隊の長は、見分の結果を火災出場時における見分調書(
第3号様式)により速やかに消防署長に報告しなければならない。
第23条 消防署長は、消火活動をするために当たって物を移動し又は破壊する場合は、努めて原状がわかるように処置するとともに調査のため必要な措置を講じて現場保存に努めなければならない。
第24条 調査員は、関係者等の立会いを得て現場その他関係ある場所及び物件について詳細に見分しなければならない。ただし、少年(18歳未満の者。以下同じ。)は立会人としてはならない。
2 前項の見分の結果については、火災現場(鑑識)見分調書(
第4号様式)に記載しておかなければならない。
第25条 調査員は、調査内容を明らかにするため必要な写真及び図面を作成し、写真は写真撮影簿(
第5号様式)によりちょう付しておかなければならない。
2 写真の陰画(CD−R)は保存しておくものとする。
第26条 調査員は、質問により知り得た事項で、調査上必要と認めるものは、質問調書(
第6号様式)に録取しておかなければならない。
2 質問調書を作成した調査員は、前項による質問調書を被質問者に閲覧させ又は読み聞かせて誤りのないことを確かめさせ、同人が調書の内容について増減変更の申し立てをしたときは、その供述を調書に記載しておかなければならない。
3 被質問者が、調書に誤りのないことを申し立てたときは、これに署名押印を求めておかなければならない。ただし、これを拒んだ場合はこの限りでない。
第27条 調査員は、質問を行うに当たっては直接経験した事実の供述を得るように努めなければならない。
第28条 少年又は精神疾患があると認められる者若しくは
ろうあ者に対して質問する場合は、立会人をおいて行うものとする。
2 外国人に対して質問する場合で通訳を必要とするときは、書面にて提出させることができる。
第29条 第24条第1項ただし書及び前条第1項の規定は、次の場合には適用しないことができる。
(1) 年齢、心情その他諸般の事情を考慮して支障がないと判断される場合
(2) 立会人を置くことにより真実の供述が得られないと判断される場合
第30条 消防署長は、消防対象物の関係者に資料の提出を求めることができる。
第31条 消防署長は、前条により資料の提出があった場合は提出者に対し資料保管書(
第7号様式)を交付しなければならない。ただし、所有権を放棄した場合その他必要がないときはこの限りでない。
2 前条に基づく資料には、保管票(
第8号様式)を付し保管品目録(
第9号様式)に記載してこれを保管しておかなければならない。
第32条 前条第1項に基づく資料を返還する場合は、資料保管書と引き換えに行うものとする。
第33条 消防署長は保管した資料について鑑定を必要と認める場合は、研究機関に鑑定(試験)依頼書(
第10号様式)により依頼することができる。
2 前項に基づき鑑定を依頼する資料のうち、提出者が所有権を放棄しないものについて鑑定処分承諾書(
第11号様式)により提出者の承諾を得ておかなければならない。
第34条 調査員は、火災現場(鑑識)見分、質問及び資料などにより知り得た事実を総合検討して火災原因を判定し、火災原因判定書(
第12号様式)を作成しなければならない。
第35条 火災原因の分類は、次の各号に掲げるとおりとする。
第36条 損害の調査は、火災及び消火のために受けた全てについて行われなければならない。
第37条 損害の種別は、次の各号に掲げるとおり区分する。
(1) 焼き損害 火災によって焼けた物及び熱によって破損した物等の損害をいう。
(2) 消火損害 消火活動によって受けた水損、破損、汚損等の損害をいう。
(3) 爆発損害 爆発現象の破壊作用により受けた前2号以外の損害をいう。
(4) 死傷者 火災に関係のある死者及び負傷者をいう。
(5) その他の損害 火災により生じた損害のうち前各号以外のものをいう。ただし、間接的な損害は含まない。
第38条 建物の焼損の程度は、1棟ごとに次の各号に掲げるとおり区分する。
(1) 全焼 建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の70パーセント以上のもの又はこれ未満であっても残存部分に補修を加えて再使用できないものをいう。
(2) 半焼 建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の20パーセント以上のもので全焼に該当しないものをいう。
(3) 部分焼 全焼、半焼及びぼやに該当しないものをいう。
(4) ぼや 建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10パーセント未満であり焼損床面積が1平方メートル未満のもの、又は収容物のみを焼損したものをいう。
(5) 自動車車両、鉄道車両及び船舶、航空機の焼損は、前各号の規定に準ずる。
2 むねとは1つの独立した建物をいう。ただし、渡りろう下の類で2以上のむねに接続しているものは、渡りろう下の部分を等分して各むねと同一むねとみなす。
第40条 建物の焼損面積は、次の各号により算定する。
(1) 焼損面積は、建物の焼損が立体的に及んだ場合は、その部分の床面積による。
(2) 前号以外の焼損の面積は、表面積による。ただし、床又は天井とその空間を構成している表面との2面以上の焼損があった表面で囲まれる部分は床面積とする。
第41条 建物の構造は、次の各号に掲げるとおり区分する。
(1) 木造建築物 柱及びはりが主として木造のものをいい、防火構造のものを除く。
(3) 準耐火建築物(木造)
建築基準法第2条第9号の3に定めるもののうち、柱及びはりが主として木造のものをいう。ただし、同号ロに定めるもののうち柱及びはりの一部が木造のものを除く。
(4) 準耐火建築物(非木造)
建築基準法第2条第9号の3に定めるもののうち、前号以外のものをいう。
(6) その他の構造 前各号に掲げるもの以外のものをいう。
第42条 世帯は、住居及び生計をともにする者又は1人で独立して居住し、生計を維持する者ごとに1世帯として計算する。
第43条 世帯のり災程度は、次の各号に掲げるとおり区分する。
(1) 全損 建物(収容物を含む。以下この条において同じ)の火災損害額がり災前の建物の評価額の70パーセント以上のものをいう。
(2) 半損 建物の火災損害額がり災前の建物の評価額の20パーセント以上で全損に該当しないものをいう。
(3) 小損 建物の火災損害額がり災前の建物の評価額20パーセント未満のものをいう。
第44条 損害額の算定は、次の各号の区分によって行う。
第45条 損害額の算出は、第37条第1号、第2号、第3号及び第5号に係る物件については、前条の区分に従ってり災時の価格により算出しなければならない。
(1) 消防吏員、消防団員及び消火活動に関係のある者については、火災を覚知したときから現場引揚げまでの間に死傷した者をいい、その他の者については火災現場における死傷者をいう。
(2) 前号の負傷者が負傷後48時間以内に死亡した場合は、火災による死者とする。なお、負傷後48時間経過して30日以内に死亡した者は「30日死者」とする。
第47条 前条の負傷の程度は、次の各号に掲げるとおり区分する。
(1) 重症 傷病の程度が3週間以上入院加療を必要とするものをいう。
(2) 中等症 傷病の程度が重症又は軽症以外のものをいう。
(3) 軽症 傷病の程度が医師の診断の結果入院加療を必要としないものをいう。
第48条 調査員は、り災した物件を検査する場合は、関係者に質問して構造、材質、品名、品質及び数量等についてこれをたださなければならない。
2 前項において質問したときは、必要に応じて質問調書を作成するものとする。
第49条 消防署長は、り災した物件の所有者、管理者、占有者、その他これに関係ある者から損害調査の資料の提出を求める場合は、り災届出書(第13号様式)によるものとする。
第50条 消防署長は、前条によるり災届出書を受理したときは厳密に調査して届出内容に不審のある場合は、届出者に質問してこれをたださなければならない。
第51条 消防署長は、前条のり災届出書並びに現場を調査した結果により、適正な損害額を算出し損害明細書(
第14号様式から
第17号様式)を、死傷者については死傷者調査書(第18号様式)を作成しなければならない。
第52条 調査員は、調査書類の作成に当たっては、平易簡明な文章を用い、事実をありのままかつ明りょうに表現し、誇張、冗長などにわたる記述はこれを避けなければならない。
第53条 調査員は、調査書類を作成したときは、特に定めある場合を除き作成年月日を記載し、所属及び職名を表示して署名押印をしなければならない。
第54条 消防署長は、部分焼、ぼや又はこれに準ずる火災は、特に必要があると認めた場合を除き、調査書類の一部を省略することができる。
2 2以上の火災が相互に関連あるため一括して処理することが適当と認めるときは、それらの調査書類をあわせて作成することができる。
第55条 この規程により作成した調査書類のうち、次に掲げるものは火災調査報告書(第19号様式)を表紙とし書類目録を記載して整理するものとする。
第56条 消防署長は、第6条に基づく調査を行ったときは、その概要を消防長に速報しなければならない。
第57条 消防署長は、第6条に基づく調査を完了したときには、速やかに火災調査報告書に第55条の規定により作成した書類を添えて消防長に報告しなければならない。
第58条 この規程により作成した火災調査報告書は、一括し原本として保管しておかなければならない。
第59条 消防長又は消防署長は、官公署より調査書類の送付を依頼されたときは、その抄本を送付することができる。
2 消防署長は、前項により書類を送付する場合は消防長の承認を得なければならない。
第60条 この規程において別に定めあるものを除くほかは、火災報告等取扱要領を準用する。
第61条 消防署長は、火災の損害を受けた者からり災の証明を求められたときは第49条のり災届出書と照合し、支障ないと認めたときは証明(
第20号様式)するものとする。
第62条 この規程は爆発その他についても準用する。

別記

第1号様式
(第20条関係)
第2号様式
(第21条関係)
第3号様式
(第22条関係)
第4号様式
(第24条関係)
第5号様式
(第25条関係)
第6号様式
(第26条関係)
第7号様式
(第31条関係)
第8号様式
(第31条関係)
第9号様式
(第31条関係)
第10号様式
(第33条関係)
第11号様式
(第33条関係)
第12号様式
(第34条関係)
第13号様式その1
(第49条関係)
第13号様式その2
(第49条関係)
第14号様式
(第51条関係)
第15号様式
(第51条関係)
第16号様式
(第51条関係)
第17号様式
(第51条関係)
第18号様式その1
(第51条関係)
第18号様式その2
(第51条関係)
第19号様式その1
(第55条関係)
第19号様式その2
(第55条関係)
第19号様式その3
(第55条関係)
第20号様式
(第61条関係)