峡南広域行政組合

消防本部の紹介

活動の様子

農鳥岳山岳救助事案活動記録

今年から富士山の入山規制が始まり、南アルプス山系の一部を管轄として抱える当消防本部管内の山々でも登山者が急激に増加しました。今回の山岳救助事案活動記録は、令和7年8月10日、11日、12日の3日間に渡る悪天候の中での長期的な活動であり、日本百名山にも挙げられる農鳥岳(山頂3026m)付近での活動です。登山者に注意喚起を含め紹介します。

 

 

8月10日(日)天候小雨

 

10時10分、119番通報入電。

「農鳥岳で低血糖疑いの女性1名と、全身の痛みを訴える男性1名が身動きが取れない。」との通報を受信する。

 

当直救助隊長として勤務していた私は、要請内容から出動の可能性が高いこと、天候状態からヘリコプターでの活動は不可能に近く、現場まで登山し要救助者を背負って搬送する活動になると判断し、隊員の招集準備を始める。

この時点で、同日早朝から他の水難救助事案に数名の救助隊員が出動しており、招集可能な隊員には限りがあった。また、天気予報を確認するが一週間先まで悪天候予報の情報を得る。

高山岳事案で数日間に渡る活動になることを考慮し、本日中に大門沢小屋(標高約1700m)に到着したいと考えた私は7名の隊員を人選した。

 

活動の計画を進めるとともに12時32分、本事案に出動することが決定し救助指令を受ける。

現場は山梨県と静岡県の管轄が入り組んでいるため3機関合同で出動することになる。

また、要救助者の状態は「低血糖疑いの女性1名、意識はあるが呼びかけて目を開ける程度、全身の痛みを訴える男性1名、意識はしっかりしている。」との情報を得る。

直ちに人選していた隊員を招集し、14時19分、大門沢登山口に向け出動する。出動中、登山口から先は不感地帯になるため、低血糖に対する処置および心肺停止に移行した場合を考慮し、医師に指導助言を仰ぎ、隊員と情報共有しながら現場へ向かう。

 

15時45分大門沢登山口到着、準備を行い入山、18時15分大門沢小屋に到着、明日の活動調整を図る。翌日の悪天候、要救助者の状態を考慮すると、接触後は背負い搬送で同ルートを下山する救助方針で統一を図った。翌朝5時00分には登山開始する旨を隊員に周知し1日目の活動は終了。

  農鳥1-1   農鳥1-2   農鳥1-3

8月11日(月)天候雨 風速3m程度 

 

4時00分起床。大門沢小屋管理人に今後の天候状態と農鳥岳付近の天候状態を確認すると、大門沢下降点(標高約2900m)までは変化はないが、尾根上は横殴りの雨と風速15m以上の暴風との情報を得る。

 

5時00分、登山開始。大門沢下降点までの登山道は前日からの悪天候で足場が悪く、所々崩れている箇所も確認する。

「この状況で要救助者2名を背負って搬送できるのか?」

と考えながら登山を継続する。また、標高が上がるに連れ雨風が酷くなることを確認する。

 

8時39分、大門沢下降点到着。気象は情報を超える暴風雨状態で立っているのも困難な状態。他機関の隊長と救助活動の継続か否かを検討する。現在より天候状態が悪化する場合は引き返す方針で決定し、救助活動を継続する。

 

9時17分、農鳥岳から下山する登山客の女性と接触。救助事案について問うと「ここから40分程度西農鳥岳へ進行した場所にシュラフに包まり身動きが取れない男性と女性がいます。2人とも意識が有り、呼びかけに応答しています。」との返答を受ける。

天候状態が悪いので安全に下山するように注意喚起し、得た情報の地点に向け登山を再開する。得た情報から最善の救出方法は何か?を考えながら登山を継続する。

 

9時47分、要救助者発見、接触。

 

要救助者は登山道上に並ぶように別々のシュラフに包まり横になっている。救助隊であることを伝えると2名とも開眼し頷いた。直ちに2名の容態を確認する。低血糖疑いの女性は喉の渇き、体の怠さ、寒さを訴えたので、所持していた飲料水、行動食を与え、糖分を補給させた。男性は喉の渇き、全身の痛み、寒さを訴えていたので飲料水を与え、転倒と滑落の有無を確認したが、ないとの返答を受ける。

 

この悪状況の中で2名を救出しなければならない最善の救助方法は何か?判断を強いられる。ここまで6時間以上急勾配の登山道を登ってきた隊員たちも疲労の色は隠せない。

 

隊員たちの表情を確認すると。「やれます!できます!」とう眼差しで私に返答してきた。

私の心配は一瞬で消えた。頼もしい隊員達と活動できていること、この隊の隊長でいられることを誇りに思った。

 

刻々と悪化する状況で2名を救出しなければならないことを考慮し、時間のかかる大門沢小屋への搬送は諦め、農鳥小屋(標高約2800m)へ2名を搬送する一時避難の救助方法を決心。

男性は全身の痛みが強く、縛着に時間を要することから救助隊を2班に分け、1班は動ける女性を直ちに縛着、搬送開始。

2班は男性を縛着後に搬送を開始する方針に決定。1班は10時35分に女性を農鳥小屋へ背負い搬送完了。ピストンで2班の補助へ向かう。合流後に協力して搬送。

 

11時55分に男性を農鳥小屋へ背負い搬送完了。一時避難完了となる。

山小屋で2名の継続観察を実施する。男性の呼吸苦が強く、本日中に地上までの搬送も考えたが、視界不良、隊員1人で立っているのも困難な暴風雨など救助活動は危険と判断し、中止した。

 

要救助者の状態は次第に回復し、夕方には症状も回復し、自立で生活できるまでになった。救助現場が静岡県側のため静岡県隊に引き継ぎ自隊の活動は終了した。翌日は下山する旨を隊員に周知し、2日目の活動は終了となる。

農鳥2-1  農鳥2-2  農鳥2-3

8月12日(火)天候暴風雨。風速15m程度。

 

4時00分起床し、天候状態を確認すると「天候は横ばい状態で回復は見込めない。」との情報を得る。6時30分下山開始。16時35分に帰署し当隊の任務は完了となる。

要救助者は翌日に防災ヘリコプターで救助され、無事に帰宅したことを確認し、救助隊として安堵しました。

 

今回の事例は一例にすぎません。

登山中の沢の潺や、鳥の鳴声、山頂から見える景色は絶景です。しかしこれらは無事下山したからこそ得られるものであります。登頂はゴールではありません。安全に下山して山で得たものを自分の宝物にしてほしいと思います。山岳事案は下山中の事故が多くを占めています。自分の体力・登山行程にゆとりをもって登山していただきますようよろしくお願いします。

 

                                                                                                                   峡南消防本部特別救助隊

                                                                                                                    隊 長  諏 訪 真 弥

救急医療週間に伴うイベントを開催

 令和7年9月7日(日)富士川クラフトパークにおいて、身延町公式マスコットキャラクタ「みのワン」を一日救急隊長に委嘱し、救急業務や救急医療に対する正しい知識と認識を深めていただくためにイベントを開催しました。

 このイベントを通して、救急活動に興味を持つきっかけになっていただけたらと思います。

  救急イベント     救急イベント2

水難・水害救助合同訓練

水難・水害救助 水難・水害救助 水難・水害救助

 令和7年8月4日に南部橋上流の富士川河川敷において富士川流域水難事故防止対策協議会員および山梨県警察署員と水難・水害救助合同訓練を行いました。

 記録的な豪雨により急激に富士川の水量が増え、川で遊んでいた多数の人が取り残されている想定で訓練を実施しました。発生した事案を迅速に対応し各関係機関と連携を強化することができました。

 夏期シーズンに入り、水難事故が発生しやすい時期ですが、水難事故防止活動や救助活動の強化に努めて参ります。

ライフジャケット教室

   ライフジャケット   ライフジャケット

 令和7年7月7日に今年度も六郷小学校でライフジャケット教室を行いました。

 水遊びに潜む危険から身を守るライフジャケットの存在をしってもらい、実際に着用することで、正しい使用方法や水中での浮き方を体験してもらいました。

 暑い日が続きますが、水難事故が起きないようライフジャケットを活用し、安全に水遊びを楽しみましょう。

第52回山梨県消防救助技術大会

大会1 ブリッジ救助 ほふく救出

 令和7年6月10日に山梨県消防学校で第52回山梨県消防救助技術大会が開催されました。

 あいにくの天気でしたが、日々の訓練成果を遺憾なく発揮し見事ロープブリッジ救出、ほふく救出で優勝することができました。ロープブリッジ救出は令和7年7月18日に神奈川県消防学校で開催されます第53回消防救助技術関東地区指導会、ほふく救出は令和7年8月30日に兵庫県立広域防災センターで開催されます第53回全国消防救助技術大会に出場いたします。

救急法講習会

救急法

令和7年5月29日上野小学校 

救急法

救急法

令和7年6月6日六郷小学校

 本格的な夏を迎えるこの時期、当本部管内の各学校ではプール開きを前に教職員および保護者を対象とした「救急法」を実施しています。

 救急法は危険にさらされた誰かの命を守る大切な知識、手技です。救急法の普及は皆さんにもできる人命救助の第一歩です。

 これから迎える夏の行楽シーズン、防災の日を前に各地域自治体や各種団体等においても救急法および普通救命講習が開催されています。機会がありましたら、積極的な参加をお願いします。

 

講習会・資格試験についてはこちら

トンネル消防防災訓練

トンネル訓練 トンネル訓練 トンネル訓練

 令和7年5月26日、中日本高速道路株式会社、中日本ハイウエイパトロール東京株式会社、静岡県警察本部、山梨県警察本部および静岡市消防局 港北消防署と合同により、中部横断自動車道の樽峠トンネル内で訓練を実施しました。

 この訓練では、対面2車線の通行区間のトンネル内で衝突事故が発生。火災発生の危険があり、運転手1名が車内に取り残されているという想定で行いました。

  初期対応から事故処理完了までの一連の流れを各関係機関と再確認し、迅速確実に対応するための技術向上および連携体制を強化することができました。

山岳遭難救助合同(警察・消防)訓練

 富士山1 富士山2 富士山3

  本訓練は、山岳遭難発生時における迅速・安全な救助および救助隊員の安全確保に対する知識・技能の習得を図る目的で、警察、消防合同で実施されました。

  訓練は山梨県警察本部 山岳警備安全対策隊の隊員の指導のもと、富士山6合目付近で実施され、ふだん体験することのできない安全確保技術や知識・技能の習得をすることができました。

山梨県高速道路救急消防連絡協議会 連携訓練

連携訓練1 高速2 高速3

  令和6年10月25日(金)、富士川道の駅で高速道路連携訓練を行いました。

  山梨県警察本部交通部高速道路交通警察隊、中日本ハイウエイパトロール東京甲府基地、峡北消防本部および、南アルプス市消防本部が参加していただき、「高速道路内の法面が崩落し、崩落した立木の下敷きになった運転手が車内に取り残されている状況の中、倒木をよけた車両が車線を飛び越し壁面に衝突した」訓練想定のなか訓練を行いました。

  実際の現場に近い環境で訓練をすることで、連携体制の強化、安全確保の徹底および迅速確実に対応する技術を向上することができました。

山岳救助訓練

山岳1 山岳2 山岳3

  令和6年10月21日(月)、山梨県警察本部、鰍沢警察署、南部警察署および峡南消防本部特別救助隊合同で山岳救助訓練を実施しました。

  「富士川町日向山周辺にキノコ採りで入山した男性と連絡が取れなくなった。」想定で行い、近年増加傾向にある「捜索からの救出救助訓練」「山間地搬送訓練」を主眼に置いて各機関の活動を確認しました。

  訓練後は各機関から課題を挙げて検討会を実施し、山岳地の特性や資器材の充実化等今後の活動の更なる向上に向け意見を交わしました。

  峡南地域は高山岳地帯に囲まれ、有事の際は活動も困難をきたしますが、迅速な救助活動を行うため、今後も定期的に合同訓練を実施し技術の向上に努めて参ります。

流水水難救助合同訓練

月例訓練1 月例訓練2 月例訓練3 

  令和6年9月25日 (水)、富士川河川敷において笛吹市消防本部と合同で水難救助訓練を実施しました。流水域での救助活動は特殊な環境下であるため年に数回実施しています。

  この日の合同訓練では、お互いの知識・技術を共有することによって、更なる向上ができました。また、笛吹市消防本部と顔の見える関係性を構築することで、災害対応時の連携も深めることができました。

第52回全国消防救助技術大会

 ほふく救出 ほふく救出 ほふく救出選手写真

  令和6年8月23日千葉県消防学校で開催されました「第52回全国消防救助技術大会 ほふく救出の部」に山梨県代表として出場しました。連日猛暑のなかで積み上げた訓練の成果を遺憾なく発揮し、見事上位入賞という成績を収めることができました。

船舶講習会

 船外機取り付け 実践の様子 船内の様子

  令和6年8月13日河口湖において、ボート業者による実技講習会を受講しました。当本部が保有する船外機付きボート運航の基本、船外機(ボートエンジン)のメンテナンス方法、救助方法の基本確認等を指導していただき、非常に内容の濃い訓練となりました。

災害対策ドローン合同訓練

 ドローン合同訓練 ドローン合同訓練 ドローン訓練4 

  令和6年8月8日に富士川町の旧中部小学校で株式会社エデックス、富士川町役場および南アルプス市消防本部と合同訓練を行いました。

  合同訓練では基本技量の確認、野外での遠方飛行、目視外飛行や倒壊家屋を想定した建物内捜索・進入訓練を行いました。

  専門知識のある方と訓練を行うことで、災害に備えた技量を取得することができ、災害発生時にドローンの使用範囲を拡張することができるようになりました。

ライフジャケット教室

ライフジャケット教室 ライフジャケット教室 ライフジャケット教室 

  令和6年7月11日に六郷小学校プールで小学1・2年生に向けてライフジャケット教室を行いました。水遊びに潜む危険を考え、身を守る道具としてライフジャケットがあることを知ってもらい、実際に装着することでライフジャケットの使い方や重要性を感じてもらいました。

水に入る機会が増える時期なので、水の危険性を周知する活動を通し事故防止に努めていきます。

水難救助研修

 水難1 水難1 水難3

  令和6年7月3日、4日の2日間、山梨県消防学校の「令和6年度水難救助研修」に講師として参加しました。担当時間が2日間に拡大され、例年学校プールで実技訓練を行っていましたが、本年度から実際の河川、富士川で実施訓練を取り入れました。

自然の中で救助活動する危険性を体験していただき、安全管理の徹底など入校生への指導とともに、参加した当消防本部の隊員も技術、意識の向上を図ることができました。

旧身延中学校で消火・救出想定訓練

 見延中学解体訓練 見延中学解体訓練 見延中学解体訓練

  令和6年6月24日から28日の間、解体予定の旧身延中学校を活用し耐火建物火災の消火、救出を想定した訓練を実施しました。

  実践的な訓練となり、さらなる技術向上につなげることができました。

第51回山梨県消防救助技術大会

  令和6年6月11日に山梨県消防学校で第51回山梨県消防救助技術大会が開催されました。

峡南消防本部から7種目に21名の選手が出場し、ほふく救出、ロープブリッジ救出、障害突破の3種目で見事優勝しました。また、ほふく救出は大会新記録を更新し好成績を収めました。

  ロープブリッジ救出および障害突破は令和6年7月18日千葉県消防学校で行われる「第52回消防救助技術関東地区指導会」に、ほふく救出は令和6年8月23日同会場で行われる「第52回全国消防救助技術大会」に出場します。

大会1    大会2  

ほふく救出

    ●ほふく救出●

ブリッジ救助

   ●ロープブリッジ救出●

障害突破

     ●障害突破●

山梨県水防訓練

水難1         水難2

  令和6年5月26日に富士川水辺プラザで行われた山梨県水防訓練に参加しました。

 

  台風10号により増水した富士川において、1名が橋の橋脚に取り残されている想定のなか、

県警察航空隊「はやて」と合同で訓練を実施しました。

山梨県消防救助技術大会に伴う峡南消防本部指導会

救助1   披露

令和6年5月21日に中部署訓練場で救助技術大会に向けて指導会が行われました。

 

救助隊が日頃の訓練の成果を園児の前で披露しました。